各々の「お楽しみ」を見つける、掘りおこす。日々の物語マガジン。

#1 うちの味

「おぼろげレシピ」は、オーナカ家の味を両親が元気なうちに聞いておきたいなと思いインタビューした備忘録です。

実家は仕出し屋を営んでいました。祖母がはじめた仕出し屋を継ぐため、父は専門学校を卒業後、東京・京都に修業へ。父曰く、もう少し修業していたかったとのこと。母はNHK「きょうの料理」を購読していたり、料理番組や新聞で紹介されていたレシピを取り入れて、いろいろ作ってくれました。

子どもの頃、父が読む「美味しんぼ」で食材や難しい漢字も覚えました。晩ごはん作りの手伝い。これは、つまみぐいや自分のおかずの分量を調整できるという特権もあります。そんな環境で、料理に興味をもち、食べることが好きな大人になりました。

ひとり暮らしで外食も多く、自炊も簡単なものになりがちです。思い立って「おから」を炊いてみました。何かが足りなくて、美味しくない…。後日、母に作り方を聞くと、ある食材や手順が抜けていました。おからの他にも、定番だったおかずの作り方を聞きました。砂糖やしょう油の分量を聞くのですが「そうやねぇ…お好みで。」「う~ん…お好みで。」「お母さんは甘めが好きやから…お好みで。」そこが知りたいんだけどな~と最初は思っていたのですが、繰り返される「お好みで。」にハッとしました。

味も見た目も覚えているのだから、自分が美味しいと思う味に近づくまで、何度も作ったらいいんだと。

「おぼろげレシピ」は要点だけ書いたもので、調味料の分量はざっくりです。父には、仕出しの料理を聞いています。改めて気づいたこともあり、いい機会になりました。ぼちぼち作ってみようと思います。